三 嶋 亭
2012年4月
何回か、夫がつぶやいた言葉 ”三嶋亭 に行ってみたいな〜。”
4月中旬、やっと夫の思いが叶った。
すき焼きの 『三嶋亭』 は京都・寺町三条にあり、創業は明治6年と文字どおりの老舗。
今の若者たちでにぎわう繁華街の中で、この一角だけが時代がかって見える。
玄関を入ると背広を着た下足番の人の丁重なお出迎え。
”さっ、さっ、どうぞ”と案内されるまま、急な階段を上る。
そこに昔を残す造作のあれこれ。とても狭い部屋だけれど、雰囲気はいい。
子供のころの”すき焼き”といえば、父が鍋奉行であったのを思い出す。
その頃、家では、割り下など使わず、砂糖とお醤油で味付けしていた。
焦げ付きそうになると水をさす。自然と味がぼやける。
だから、すき焼きは最初と煮詰まった最後に食べるのが好きだった。
自分の家庭を持ってからは、何かいい方法はないものかと。
行きついたのが、お肉全部を砂糖とお醤油で軽く炒めておく方法。
その1/3のお肉と出た肉汁少しと野菜でスタート。
あとは随時、野菜・お肉を足し、味付けしていく。先にお肉の味を閉じ込めているので、味が抜けない。
焦げ付きそうになったときは、お酒を入れるといいそうな。
でもこの方法、席に着いたとき、まず、目に飛び込んでくるのが
きれいに並べられた赤いお肉ではなく、炒めたコロコロの茶色いお肉では、ちょっと、興ざめかも。
今回は、仲居さんがどんな風なすき焼きをしてくれるのか、楽しみ・・・
砂糖を敷き、お肉を入れて少し焼き、その上から割り下を注ぐ。(昔から、割り下だったのかしら?)
炒めあがった順に客に勧める。お鍋に残った少しの肉汁の上に、野菜らを入れ
さっと炒めるぐらいで供してくれる。これを3回位繰り返す。
先付・ご飯・香の物・果物がついている。
家と違って、野菜の量が少ないからか、煮えすぎることなく、おいしくいただいた。
お肉はとろけるような柔らかさ。
ほんのしばらくして、夫と自然と目を合わせる。仲居さんがいたので、本当のことが言えない。
おいしいのだけれど、お肉のうまさが、思っていたのとちょっと違う。
期待しすぎたせいかな?まぁ、その日の牛の違いによるのでしょう。
味付けはちょうど好みに合っていたので、もう一度訪れて、この味を覚えて帰りたい。