本当の味
2011年7月
7月に入ってから、行きつけの花屋が店をたたみ、夫の行くレコード店も無くなっていた。
近所のクリーニング屋は、シャッターを下ろした。
それぞれの理由があるみたいだけれど、客としては、代わりを探さねばならない。
われわれが子供のころは、八百屋、肉屋、魚屋などそれぞれ独立した店々が
市場に集まっていて、お互いに持ちつ持たれつの関係にあったように思う。
それが、時代が変わると、こうも、バッタバッタと、店を閉じてしまうのだろうか。
買い物客の世代交代なのか、嗜好の変化なのか、
それとも、コンビニやスーパー、デパートで、すべてがそこで買い物出来る、
その利便性に走るのか。
幸い、私のまわりには、今のところ、食べることに関しては、専門を掲げている店が健在である。
果物屋だけが去年、店を閉めた。
半年後、客の要望で、電話注文による宅配で再開した。
昔、母が言っていた言葉を思い出す。
「あの人はあかもんや″だから、目は確か。親の代からのたたき上げだから、
果物を鑑別する目は、確かよ」と。
あかもん″とは、あおもん″に対する言葉で、青い野菜からみて、
果物の代表りんごの赤を意味するらしい。つまり果物屋のこと。
酒屋、米屋、かしわ屋、乾物・塩干屋、かつお屋、川魚屋、まだまだあるけれど
それぞれの店主が、ソムリエ的な存在であった。 今もそう。
旬とか産地、料理方法など、聞けば丁寧に教えてくれる。
料理学校で習った基礎知識の上に、料理のことも、世間のことも
いろいろの知恵が上積みされる。
若い人が学ぶのは、何もインターネットだけではない。
こんな暖かい人との交わりの中から、安かろう悪かろうではなく、安くていい本当の味″を
見分けられる目を養ってほしい。
それには、お店が存続するように、われわれも協力しなければならないし、
店も、果物屋のようなアイディアを考え出してほしいと思う。